育休中に補償される収入は「最初の半年間は収入の67%、その後は50%」というのが一般的に理解されています。
しかし受け取ってみると案外少ないと感じてしまいました。
そこで実態としての年収換算率を算出してみたところ、場合によっては67%期間でも4割強になってしまうという結果になりました。
先日、育児休業給付金を受け取りました。
その時の記事はこちら↓
育休給付金を年収換算してみたら思ったより少ない
給付月額は約30万円でした。
この額を12倍して単純計算すると年収360万円です。
働いている時の年収からすると半分くらいです。
むむむ…67%支給期間なのに少なくない!?という感じになりました。
そこで厚生労働省の公式資料を調べてみました。
給付月額の計算式は以下となっています。
賃金月額 = 賃金日額 x 支給日数 x 支給率
このうち日数(30日)と支給率は固定のため、決定要素は「賃金日額」です。
その賃金日額は「育児休業開始前6ヶ月間の賃金を180で割った金額」、つまり半年間の平均です。
6ヶ月間とあるので、一般的な年2回のボーナス(賞与)支給のうち1回は含まれそうな感じがします。
賃金の定義を調べる必要が出てきました。
厚生労働省の別の資料によると次のように定められています。
おや、賃金とは「事業主が同労者に支払う全て(の金)」と読めます。
除外項目があるかもしれないので読み進めていきます。
「3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金は賃金日額の算定の基礎となる賃金とはしない」!!!
ボーナスが育休に含まれない原因がようやく突き止められました。
理由は不明です。
ボーナス(特別手当て)だから!?
育児休業給付金の実質的な年収代替率
ボーナスが含まれないことが判明したので、それを踏まえて給付金の実質的な支給率(年収代替率)をシミュレーションします。
「年間ボーナスは月収○ヶ月分」と表現されることも多いので、ボーナスなし(0ヶ月)~6ヶ月で年収代替率の変化をグラフにします。
計算式は次のようになります。
年収代替率 = 育児休業給付金月額 x 12 / (月収 x 12 + 年間ボーナス)
支給額ベースの年収代替率
ボーナスを含めた育児休業給付金の支給率を図示します。
青線が育休を6ヶ月取得したケース、オレンジが12ヶ月のケースです。
横軸が年間ボーナス支給月数です。
ボーナスは給付金の額と無関係のため、年間ボーナスが多いほど年収代替率は下がります。
(育休6ヶ月のケースでは年間ボーナスを1/2にして計算しています。)
(ボーナス月数は通常 基本給ベースなので、残業が多いと年収代替率は表より上がります。)
結果としては以下です。
- ボーナスなしなら確かに67%支給される(12ヶ月トータルは59%)
- 企業業績が良かったり個人業績のボーナス反映分が多かったりすると、4割を切る可能性がある
手取りベースの所得代替率
次に、厚生労働省自身が公表している「手取り約8割補償」を検証します。
育休中は所得税、社会保険料、雇用保険料が免除されるため、「年収が下がっても生活に使える金は実質的に8割支給される」という論法です。
そこで手取りベースの支給率を「(育休の)所得代替率」と表現します。
(年金の所得代替率とは異なります。)
厚生労働省の資料から「支給額ベースで67%→手取りベースで80%」とすると、先ほどの計算結果に1.19 (= 80% / 67%)を掛ければ年収イメージがしやすくなるはずです。
(税率は年収帯によって変わるため、年収数百万円世帯向けの概算です。)
結果はこちら↓
前出の支給額ベースよりは上がるものの、やはりボーナスが増えると支給率は下がります。
大企業や国家公務員の平均実績が年間ボーナス4ヶ月とすると、手取り収入としては6割程度になるイメージです。
まとめ
- 育児休業給付金の支給率は、支給額ベースでは(67%ではなく)5割程度
- 手取りベースでは(8割ではなく)6割程度
厚生労働省発行のパンフレットでは最大ケースの支給率が大きく宣伝され、ボーナスを含めない点は「賃金」と不明確にしか書かれていませんでした。
条文まで調べないといけないのは不便です。
育児休業給付金は生活の支えとなる制度なので、誤解なく制度利用できるように周知してほしいと思います。
あとは個人的な話ですが、年棒制の知り合いは「育休でもかなり金入るな~」と言っていました。(年収がそのまま給付金の算定に使われるため)
さて、今回は育休制度のイメージと実態の乖離という話でした。
次回は育休制度の歴史を紐解き、むしろ今の制度がどれだけ恵まれているかを解説します。