ユニセフの調査報告書において、日本の男性の育休制度は世界一優遇されていることが公表されました。
そのような制度がどのように整備されてきたかについて、制度の変遷を辿ることによって今の制度のメリットを検証していきます。
前回の記事では、育児休業給付金の支給率67%を大々的に打ち出すことは結構ミスリードである、ということをまとめました。
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その一方で制度自体は素晴らしいものです。
そのことを実感しやすくするために、2つの比較を通して制度を見ていきます。
男性の育休制度は最大支給総額が世界一多い
これは2019年にユニセフが発表した、世界の子育て支援政策に関する報告書による結論です。
日本語の記事から抜粋すると、男性育休の手当て支給期間は30.4週で、2位の韓国(17.2週)の2倍近い期間です。
注意点としては、ここでの「手当て支給期間」とは手当てが支払われる最長期間ではなく、「賃金全額(100%)に換算して取得できる最大休業期間」です。
詳しい説明は割愛しますが、要するに「日本の男性育休制度は世界一手当てが多く設定されている」ということです。
(詳しく書けなくて恐縮ですが、「多く設定されている」と「多くもらえる」は同義ではありません。)
ちなみに母親の育休手当てとしては36週で16位です。
育休制度の変遷
国際比較に続いて、国内比較によって育休制度の良し悪しを検証します。
国内比較とは、現在と過去の育休制度の比較です。
育児・介護休業法を管轄している厚生労働省の公表資料からの抜粋です。(資料1、資料2)
下の図は単なる魚拓(信憑性の確保)なので、深く読み込まずに図の後の解説に進むことをおすすめします。
育児休業給付金の給付率の変遷をまとめると以下のようになります。
1995年以前 0%
1995~2000年 25%(うち職場復帰給付金5%)
2001~2007年 40%(うち職場復帰給付金10%)
2007~2010年 50%(うち職場復帰給付金20%)
2010~2014年 50%
2014年以降 67%
30代の私が生まれた時、育児休業給付金は無かった!!!
個人的な話はともかく、2020年時点で25歳以上の人は、親が育休中に給付金なしで子育てをしていたということです。
(ただし児童手当て(子ども手当て)は1972年からありました。)
その後、育児休業給付金は数年ごとに拡充されてきました。
加えて、2010年までは職場復帰給付金という制約がありました。
職場復帰給付金とは、育休終了後に6ヶ月以上働いた場合に支給される給付金です。
つまり、今ではよくある「育児休業給付金を最大限もらってから職場復帰せずに退職」するとかなり損な仕組みになっていたのです。
今回は支給率のみを比較しましたが、2017年には給付金の支給期間(原則1年)を最大2年まで再延長することができるようになり、支給期間の面でも制度が拡充されています。
まとめ
- 日本の育休手当ては男性が世界一、女性が16位
- 今の子育て世帯の親は、ほとんどが育児休業給付金なしで子育てした
- 育児休業給付金の支給率は大幅に拡充されてきた
特に育児休業給付金制度の充実は驚くべきものです。
給付金の変遷から、日本政府の方針は「給付金もらい逃げでもいいから子どもを増やしてほしい」であると解釈できます。
それほどまでに少子化は深刻である、とも言えます。
誤解を恐れずに言えば、育休中でも実質的に所得の実質8割も補償されるのは少子化のおかげです。
個人的に、今回の記事を作成して育休制度への認識が変わりました。
これからは、雇用保険料をしっかり納めるべく仕事を頑張りたいと思います。