保育園には行政によって多額の補助金が投入されています。
元々は収入が少なく共働きせざるを得ないが、仕事中に子供を預けるアテのない家庭を対象とした制度と思われますが、実態はそうなっていないのではないか、ということを検証します。
保育園にかかる費用のうち、どの程度が補助金で賄われているのかは、昨日の記事で解説しました。↓
保育園の目的
厚生労働省が公開している保育所保育指針解説に保育園の役割が書かれています。
保育所は、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第39条の規定
に基づき、保育に欠ける子どもの保育を行い、その健全な心身の発達を
図ることを目的とする児童福祉施設であり、入所する子どもの最善の利
益を考慮し、その福祉を積極的に増進することに最もふさわしい生活の
場でなければならない。
親が世話をできない時に子供を預かるだけではなく、子供の心身の発達が健全に行われるようにすることが明記されているんですね。
保育園の対象となる家庭の収入状況
前述したように、保育園は「保育に欠ける子供のための施設」です。
基本的には、共働きの家庭が対象となります。
それでは、共働きはどの程度の収入レベルなのでしょうか?
その実態に最も近いと思われるのが次の表です。
対象が30代子育て世帯なので小学生以上の家庭も含まれていますが、年齢が高い≒年収が高い部分を割り引いて考えれば、幼児家庭の実態に沿っていると思います。
ちなみに、2017年の平均初産年齢は30.7歳です。
図を見ると、片働きよりも共働きの方が世帯年収の分布が高いです。
働き手が多いので、当然といえば当然です。
共働きの必要性の考察
それでは共働きの家庭は、夫婦ともに働かないと生活できないのでしょうか?
シミュレーションのため、ここでは共働き家庭の収入比率を夫6割、妻4割と仮定します。
そして共働き家庭の妻が仕事をやめ、夫の収入のみの片働き家庭になったとします。
その場合は前出の表が以下のようになります。
矢印が2本追加されました。順に説明します。
① 緑の矢印
500万円台の共働き家庭が、片働きになると300万円台になり、生活は厳しそうです。
片働きの中でも低い収入水準に落ちます。
② 紫の矢印
800万円台の共働き家庭では、片働きになっても500万円程度の収入があります。
これは平均的な片働き家庭並みです。
これらから、以下の状況が推定されます。
- 700万円台以下の共働き家庭は、必要に迫られて共働きをしている(約8割)
- 800万円台以上の共働き家庭は、必ずしも必要ではなく、キャリア継続目的の要素がある(約2割)
各家庭の事情は様々なので一概には言えませんが、傾向としては上記になると思います。
(家庭事情は例えば都市部では生活費が高め、子供を祖父母に預けて共働きできる、子供が多くより収入アップが必要、といったことです)
結論
共働き家庭の約2割は、(高収入のため入園決定の優先順位は下がるものの)子供を保育園に預けるものと思います。
もちろん保育園の役割は「保育に欠ける子どもの保育を行う」ことなので高収入であろうとも共働き家庭が保育園を利用することは何の問題もありません。
しかし前の記事に書いたように、保育園には多額の補助金が投入されていることは、実質的に高所得層に対して賃金を助成していることになるのではないでしょうか。
高所得層の保育料を高くすることによる調整がなされていますが、保護者負担割合が保育経費の1~2割しかないので、調整力は限定的です。
また3歳児以降では幼児教育・保育の無償化が行われています。
これは保育料が高い高所得層ほど恩恵を受けることになり、個人的には応能負担の思想に沿っているか疑問です。
まあ一番大きいのは、保育園による補助金が高所得共働き家庭のキャリアアップを促進して、平均所得の片働き家庭との生涯収入の差が開きまくってしまうこと、かな。
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